羽根尾貝塚から出土した遺物
羽根尾貝塚からは、当時使用した土器や石器の他に、泥炭層の環境のため残った漆塗りの木製品や骨角器などが出土している点が特筆されます。
この貝塚は、海辺の哺乳類、魚類解体作業場であり、土器は貝や堅果類(※1)などを茹でるために用い、石器はその加工に用いたものと考えられます。魚類は深海の大型魚イシナギの他、イルカ・カツオ・メカジキ・サメなど活発な外洋性漁労(※2)の存在を示します。
食用に用いた哺乳類や魚類の残滓(※3)は、釣り針や髪飾りなどに加工していました。
土器は、伊豆や東海地方でみられる土器も多数出土していることから、海を通じた人々の交流があったことが分かります。
これらの出土遺物は、当時の生活を知る上で重要なことから、神奈川県の重要文化財に指定されています。
遺跡は年代測定の結果、今から5750~5350年前とされています。貝塚が立地する中村川周辺の低地部は、9000年前から6000年前まで古中村湾と呼ばれる海となっていました。その後の大地の活動によって、標高 25 m前後の高さにまで隆起しました。
羽根尾貝塚出土遺物
(※1)堅果類:堅い皮に覆われた果実のことで、どんぐり、くり、くるみなど、穀物や豆類ではないものを指す。
(※2)外洋性漁労:波の荒い湾の外に船で出て、事業として水産物を捕獲することをいう。
(※3)残滓:残りかすや食べ残しのこと。